筒内気流対策の考え方<2>
4 今回の対策をどうするか
(1)今回入手した30cmSCTは、OHと光軸修正済みのもので、チョイ見を数回してみたが、25cm反射と比べても口径分よく見える気がするし、シャープさもNT反射やアポ屈折よりはないが、倍率を考えると思ったより遙かに良好で、よく調整されていると感じた。(もちろん持ち主のひいき目もあるだろうが。)
(2)したがって、CPをはずす、鏡筒に穴を開けるという大改造はしない方が無難との判断に至った。(B案を採用)
5 参考となったもの
B案と決めたので、無改造での対策について、何かヒントがないかと検索していたら、Cloudy Nightsというフォーラムにストライクの記事があり、延々議論されていた。これが実に面白くて、自動翻訳と混ぜながらざっと目を通してみた。
記憶に残った書き込みの趣旨をいい加減に意訳すると、
・ reflectixという住宅用断熱材やヨガマットでSCT鏡筒を巻けば、外に出してすぐ300倍で観望できるぜ。
・ それは観測地の気候(日較差の大小,湿度の高低)次第じゃないか?
・ 我が家は超寒いところだけど、巻いてうまくいっているよ。
・ もはや巻くのが常識(標準)だ。
・ 住宅用断熱シートが一番いいとは限らない、色々試してみるべき。
・ この手法は閉鎖鏡筒にのみ有効だよ。
・ 放射率から考えると黒い鏡筒は最悪。理論的には‥で、計算すると○○とすごい量の熱が放射されている。(後半、全くついて行けず)
・ じゃあ何で市販の望遠鏡は黒かったり紺色だったりするのか。
・ マーケティングに決まっている。
・ なぜ、市販の望遠鏡は断熱していないのか?
・ それはメーカの人がここ(CN)を読んでないからだよ。
・ フードにファンをつけてCPの結露防止と温度維持(温度低下防止のことか)をしてるよ。
補正板に吹き付けるのではなくフード内で渦を作るんだよ。
(全く不正確、ここはよくわかりませんでした。)
・ そもそも昼間はどこに保管してる?それも大事だ。
・ ヨガマットを巻くとせっかくのミードブルーが台無しだ。格好悪い。
・ 私はこんなかっこいいシートを巻いたぜ。
・ 私は廃品利用でこんなシートを使ったよ。
・ YOUは人に見せるために望遠鏡を持っているのか?
・ 自分で望遠鏡を眺めてニヤニヤしたいのさ。
極めて不正確な意訳ですが、こんな感じで混沌として、案外感情的で、いつまでも議論が終わらない感じで笑ってしましました。しかし、参考になりました。
余談ですが、別のフォーラムではC14を狙っているようだが、年をとることを考えるとC11がいいよとか、私は年をとったので以前使っていたC8に戻しましたとか、こんな自作台車で移動しているよとか、結構、高齢者の書き込みが多いですね。
私は、これに少し影響されて35cmではなく30cmにしました。(もちろん価格差が大きかったことも大きな要素ですが。)
6 これまでの経験
自身のこれまでの経験(あまり理論的ではなく、はやりのことをやっただけですが)も参考にする。
(1)25cmニュートン反射
・鏡筒に吸気ファンをつけ、主鏡へ斜めに外気を吹き付ける改造をしたら、オンにしてすぐに主鏡上の暖気が吹き飛ばされて、黄ばんでいた視野がみるみる透明になり,像も改善され感動した。
・一方、主鏡セルの後方からの吸気ファンでは主鏡の冷却効果は弱く、春から秋はともかく、冬場は外気の温度低下に全くついて行けなかった。(それでも従来よりはよい見え味になった気はするが。)
ただ、私は真冬に惑星写真は撮らないので,実質困らないとも言える。
・さらに、安いペルチェ素子の冷却ユニットをセルにつけてみたが、冷えるには冷えるが、1ユニットでは足りない感じで、電流大食らいの割には時間がかかり、かといって、数を増やすと大げさになり,電源装置が飛びそうでそこまでは試さなかった。
(2)8inch純カセ
・鏡筒が黒くつるぴかだったので、登山用サバイバルシート(金シート)を貼ったら、筒内空気の温度変化が穏やかになったと思われ、劇的に像が安定し,撮影できる日が増えた。
・また、撮影前に、主鏡の暖気を筒先からPC用ファンで30分から1時間吹き飛ばすとともに、主鏡を冷却するとほぼ大丈夫だった。
・ただし、私の場合、惑星撮影はせいぜい2時間程度なので、これらの対策で一晩中OKかは未確認。
・解放鏡筒なので、シート貼りがいかほどの効果があるか疑問だったが、十分以上の効果ありで驚いた。ただし20cmと口径が小さいせいもあるかもしれない。
(3)再び25cmニュートン反射
・8inch純カセの金シート効果に味を占めて、ニュートンにも貼ってみた。
厳密に言うと、鏡筒内の温度を外気温と同じにしようとしているのに、鏡筒表面からの冷気を遮断するのは矛盾しているような気がする。
・しかし、吸気ファンは主鏡を冷やすとともに、排気ファンも合わせて鏡筒内の空気をかき混ぜる役割と考えて、鏡筒内の気温の低下を穏やかにする(なるべく主鏡の遅い温度低下に寄せる)意味で金シートを貼ってみた。
・結果的には、劇的な改善は見られず、正直それほど効果は感じなかった。
・一方で、通常、直焦で撮影すると、特に冬場は1000mmを超えるとシーイングの影響でAPSでもぽっちゃりとなることが多いが、金シートを巻いた後,シーイングがよいとはいえない夜に銀河を撮影した時、フォーサーズで妙に安定した星像だと思ったことがあり、もしかすると効果があるのかもしれない。でも、光軸修正もしたなあ。
これは、しばらくこのまま様子見です。
7 今回の具体的対策
(1)鏡筒 → ヨガマット+サバイバル金シートで巻く。
Refrectixは、少量のものがなく、ロールはいい値段がしたので、安いヨガマットにした。
手元にサバイバルシートの残りがあったので、ヨガマットの内側に貼り2枚重ねとした。ヨガマットの厚みは10ミリとした。
これにより、外気(冷気)からシャットアウトすることで筒内は緩やかに温度低下する(はず)。
(2)主鏡セル → 何もせず
自動的に外気で緩やかに温度低下する(はず)
それでも温度低下が遅いときは、別途、扇風機の風でもあてる。
(3)フード → 銀シート(内壁は黒フェルト貼り)+小型ファン
フードとフェルトで冷気を緩和するとともに、小型ファンで風を補正板に送り、補正板の温度低下をわずかに緩やかにする。(同時に夜露防止)
(4)保管時 → 望遠鏡全体をサバイバル毛布(4層の薄いもの)で覆う。
とにかく温まりすぎないよう、冷えすぎないよう、防熱・防冷する趣旨。(特に冷めにくい主鏡・セルが暖まらないように重点的に考える。)
また、夏期対策として、観測小屋に屋根裏を設け、断熱層とする。(応急で対応済み)さらに換気扇とともに扇風機の風を当て続ける。
室内に保管して温度管理し、その都度運び出す手もあるが、働いているうちは無理かなあ。(室内でも昼間の温度管理が必要。)
(5)欠点
(1)~(3)の対策は、ルーフを開ける前に鏡筒内の気温と主鏡(セル)の温度がほぼ均衡していることが前提なので、均衡(安定)していないときは打つ手がない。そもそも均衡していることを確認できない。
→ MIXするファンがないので、筒内空気が安定しない時のために、何らかの撹拌装置が必要。(特に主鏡上部の暖気を吹き飛ばせないのは残念)
撮影中には回せないが、撮影前に、ハンディ掃除機で接眼筒から短時間吸わせる手はある。(いわゆるスコープクーラーだが、夜間やると、騒音となり気が引ける。)
→ 改造せずに、温度計を鏡筒内部と主鏡セルにつけられないか。
※ ここは宿題とし、運用しながら必要かも含め対策を考えることにします。
余談ですが、やはりSCTですので、ミラーシフトはあります。眼視ではあまり気になりませんでしたが、CMOSで撮影モードに入ると、PCの画面上を結構ダイナミックに移動します。
したがって、後付け接眼部の電動化、赤緯周りのバランス調整などまだまだすることがあります。
まだ梅雨入り前だが、梅雨明けの惑星シーズンに向け少しずつ改良していきます。
いろいろ注文しました。順番に手を入れていく予定です。
(続く)