鹿児島の星空3

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南十字座β星が見えるか?(その2)

先日求めた計算式を使って、開聞岳頂上から南十字座β星が見えるか計算してみた。


まず、基礎データは、
開聞岳標高     h     924m
宮之浦岳標高  H     1,936m
・地球の半径     R     6,378,000m
開聞岳緯度     φ1   31.18000°
宮之浦岳緯度  φ2   30.33608°
・緯度差           φ     0.84392°(0.01473Rad)


(5)式より θ = -0.00341Rad  (-11.7分)


念のため、簡易式でない(4)式でも計算したが、同じ結果だった。
 
マイナス11.7分か。俯角がマイナスということは、仰角か!
つまり、開聞岳頂上まで行っても、宮之浦岳頂上は俯角どころか水平より上に出ているのか。
いきなり、がっかりだ。俯角が小さくなるどころか、水平を超えて仰角なんだ。宮之浦岳の方が倍以上高いので当たり前かな。



気を取り直して、海面の俯角を計算。              
(7)式、(8)式より      θ'= 0.01702Rad=58.5分)
水平より約1度下まで見えるのか。
さすがに900m以上の標高は影響大だ。


ところで、βCru赤緯は、-59.78333°(2017.5)
一方、開聞岳頂上からの水平の赤緯は、
開聞岳の緯度-90°= -58.82000°
この差は、0.96333°(=57.8)
したがって、βCruは水平から下へ57.8分にあるはず。


海面の俯角が、58.5分だから、βCruは海面上わずか0.7分まで上がるはず。
というか、事実上0.7分では見えないことになる。


しかし、大気差で35分(※)ほど浮き上がるので、結果、屋久島がなければβCruは海面上約0.6度に見えるはず。
(※ 天頂から90°の時:天文年鑑2017 P321)


一方、宮之浦岳がある場合を考える。


βCruは大気差まで考えても水平より下22.8分(57.8-35分)までしか浮き上がらないので、宮之浦岳の仰角11.7分と合わせて、34.5分。
すなわち、βCru宮之浦岳山頂の下、約0.6度に位置していることになる。


早い話が、宮之浦岳山頂は海面から約1.2度にそびえており、βCruはその半分くらいの高さまでしか上がらないということになる。


以上を、図にしてみた。
イメージ 1
 
 
これを見ると、南中時は宮之浦岳が邪魔だが、その前後は何とかなるのでは?という気がするが、開聞岳頂上から見た屋久島を地図ソフトで描画させてみると、次の図の通り。

イメージ 2
 

 

屋久島は、宮之浦岳だけが高いのではなく、高い山が連なった台地状の島で、見事に肝心なところを隠していることがわかる。


要は、「開聞岳山頂に登っても、屋久島が邪魔でβCruは見えない」ということだ。


個人的な経験上、水平線付近の大気差は35分よりもう少し大きい気がするが、仮に今の倍の大気差があっても宮之浦岳山頂程度までしか浮き上がらない。もちろん、それはないだろう。


うーむ、「冬に開聞岳に登る必要はない」、と言うか、「登らなくてよかった」というのが最終結論でした。


すっきりしたというか、がっかりしたというか…。


一縷の望みは、「屋久島が邪魔にならない、そこそこ高い山はないか」ということだが、暇なときに地図を見ながら考えてみよう。




以下は、自分用メモ


(補足メモ1) 簡易式の検算

 

前回(4)式の近似式である(5)式から海面の俯角を求めたが、(5)式に自信がないので、
念のため別アプローチで検算する。

(4)式(の一つ前の式)より

tanθ=( R+h)-(R+H)cosφ)/*1

ちなみに、(7)式は
θ = √(2h/R)
なので、わずかに違うが、
開聞岳標高と地球半径の数字を入れて計算してみると、

(7)式では、 0.0170219271RAD(58.51707分)
検算式では、 0.0170206942RAD (58.51284分) となり、
角度の0.01分まで一致しているので大丈夫そうだ。
(まあ、hに比べRがはるかに大きいので当たり前と言えば当たり前か。)

 

 

(補足メモ2) 仰角の場合の計算式の作成


A山の頂上A点からの仰角(BAC)=θを求める。(θラジアン)

イメージ 3
 

B山の頂上(点B)から、A山の頂上(点A)と地球中心Oを結んだ直線OAの延長線と垂直な補助線BDを引く。

△ABCにおいて、
tanθ’=BC/AC

△ABCは、△ABDと相似だから、θ’(∠BAC)=∠ABD

tanθ’=DA/BD … (1)

DA=OD-OA
OA=OE+AE=R+h、

また、△OBDにおいてOD=BOcosφ 、BO=R+Hだから、
DA= (R+H)cosφ-(R+h) …  (2)

一方、△OBDにおいて、
BD=OBsinφ=(OF+FB)sinφ=(R+H)sinφ … (3)

(1)、(2)、(3)より,
tanθ’=( (R+H)cosφ-(R+h)) /( (R+H)sinφ)

ここで、θ’は微少な角なので、tanθ’=θ’と近似できる。

∴ θ’=*2/((R+H)sinφ) 単位:ラジアン

結果,θ’=-θ となり、符号がひっくり返っただけであることが検算できた。当たり前の結論だが,開聞岳頂上からほぼ真南に宮之浦岳(屋久島)があり,まさに仰角のケースに当たるため,念のために検算したもの。

(終わり)


 

*1:R+H)sinφ)

H=0の時、すなわち海面の時、φ=θであり、
また、tanθ=sinθ/cosθなので、

sinθ/cosθ = ((R+h)-Rcosθ)/Rsinθ
R(sinθ)^2/ cosθ = (R+h)-Rcosθ
R(sinθ)^2 =(R+h)cosθ-R(cosθ)^2
R(sinθ)^2 +R(cosθ)^2 = (R+h)cosθ
R((sinθ)^2 +(cosθ)^2) = (R+h)cosθ

ここで、(sinθ)^2 +(cosθ)^2=1だから
cosθ=R/(R+h)

ここで、θ→0の時
cosθ=1-(θ^2)/2だから

1-(θ^2)/2 =R/(R+h)
(θ^2)/2 =-R/(R+h)+1
(θ^2) =-2R/(R+h)+2
(θ^2) =(-2R+2(R+h)/(R+h)
(θ^2) =2h/(R+h)
∴θ = √(2h/(R+h

*2:R+H)cosφ-(R+h