鹿児島の星空3

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南十字座β星が見えるか?(その1)

今日は、「薩摩半島から南十字座β星が見えるか?」だ。

 年越し星見で南十字座γ星を撮影した時、10年以上前に薩摩半島から南十字座β星撮影できないか検討したことを思い出した。

 当時、西側(右側)のδ星までは撮影できたので、さあ次は左のβ星だということで、すっかり盛り上がった記憶がある。

 下が当時の写真。開聞岳の南側の標高100m地点での撮影。赤い↓はδ星
イメージ 2

 で、その時の結論は、平地からは無理だが、開聞岳頂上まで行けば俯角が大きくなり、海面上に出てくるので撮影可能ではないかというものだった。


 それ以来、時間がとれれば、開聞岳に登ってみようかなと思っていたが、その後、全く暇がなくなって10年以上たってしまっていた。


 そんなことを考えながら、改めて地図を見ていたら、なんと開聞岳の真南には屋久島の最高峰、宮之浦岳が位置していることに気がついた。


 ざっと計算すると、開聞岳頂上からの南の水平線は100キロちょっと先の海面となるが、ちょうどそこに屋久島があることになり、まずいことになっている。


 それで、一応きちんと計算しようと思いついて、大気中の光の屈折は無視して、直線ベースの簡単な作図をして、俯角を計算する簡易な式を作ってみた。(先々週の話)


 こういうのは10年に一度くらいしか気にならないので、記録として残しておこう。


 まず、作図した。
イメージ 1
 


A山の頂上A点からB山の頂上B点への俯角(CAB)=θ(ラジアン)を求める。


撮影地であるA山頂上の標高をhメートル= AE

A山の真南に位置するB山頂上の標高をHメートル = BF


A山とB山の緯度差 =φ

(もちろんA山は開聞岳、B山は宮之浦岳のことです。)


地球の半径をR(=6,378,000メートル) = OE = OF とし、


B山の頂上(点B)から、A山の頂上(点A)と地球中心Oを結んだ直線AOと垂
直な補助線BDを引く。


ABCにおいて、


tanθ=BC/AC


ABCは、△BADと相似だから、θ(CAB)=ABD


tanθ=DA/BD … (1)


DA=OA-OD


OA=OE+AE=R+h


また、△OBDにおいてOD=BOcosφ だから、


DA=(R+h)-(R+H)cosφ  … (2)


一方、△OBDにおいて、


BD=OBsinφ=(OF+FB)sinφ=(R+H)sinφ  … (3)


(1)(2)(3)より,
 
tanθ=*1 (R×φ+H×φ)


  ここで、R>>>H、φは微小な角なので、


φ=0*2 φ
    = (h-H) φ + (R×(φ^2)/2) φ
     =(h-H) φ + (R×(φ^2)/2) 2φ
     =(h-H) φ + (R×(φ^2)) 2R×φ
     =(h-H) φ + φ/2 


結果、(4)式の近似式は、
θ=(h-H) φ + φ2  …(5)  単位:ラジアン

使いやすいように角度の分(θ’)  に変換式を作っておくと、


  θ’=θ×(60×(180/π)) = θ×3437.75
                     π:パイ
θ’= θ×3437.75 …(6)   単位:分
 
ちなみに、B山がない場合、すなわち海面lineの俯角を求める。

海面lineの俯角は、θ=CAF=90°-FAO

一方、直角⊿AOFにおいて、φ=180°-90°-FAO=90°-FAO

したがって、φ=θ、また、H=0なので、それぞれ(5)式に代入すると
 
  θ= hθ + θ/2

両辺にθをかけると、
 θ^2= hR + (θ^2)2
 (θ^2)2= hR
 θ^2=2h/R

 ∴ θ=(2h/R)(7)  単位:ラジアン

ここも使いやすいように角度の分(θ’)に変換式を作っておくと、

(6)(7)式から

θ’= (2h/R)×3437.75
        = (2h/6,378,000m)×3437.75
        = (h×2/6,378000)×3437.75
     = (h) ×√(2/6,378000) ×3437.75
     = (h) × 1.925

∴ θ’=1.925(h) (8)   単位:分

うーむ、本当に合っているのか?
特に近似式は自信がない。
 
一応、(4)式は、天文仲間の詳しい方に見てもらっている。
 
ちなみに、その天文仲間からは問い合わせメールをしてから1時間弱で返事が来た。それもエレガントな解き方で、実際の計算結果まで添えられていた。こっちは半日以上かかってやっと(4)式を作るところまでこぎつけたというのに。

さて、あとは実例で計算&検算(検証)だ。

(続く)

*1:R+h)-(R+H)cosφ)/((R+H)sinφ)

 
ここで、θは微小な角なので、tanθ=θと近似できる。
 

∴ θ=((R+h)-(R+H)cosφ)/((R+H)sinφ) …(4)

 
                         単位:ラジアン


どうせエクセルで計算するので、このままでもいいが、以下、近似式を考える。


まず、φも微小な角なので、φ→0 の時の近似式は、


sinφ=φ-(φ^3)/6  +


cosφ=1-(φ^2)/2 +


そこで、sinφ=φ、COSφ=1-(φ^2)/2を(4)式に代入すると、
(sinφの近似式の2項目を入れると簡易計算にならないので、無視する。あとで要検証)


∴ θ=((R+h)-(R+H) ×(1-(φ^2)/2)) (R+H)×φ


    = (R+h-R-H+(R×(φ^2)/2)+(H×(φ^2)/2

*2:φ^2)/2) =0と割り切り、近似できるので、


   θ= ((h-H)+(R×(φ^2)/2